2018年7月6日に民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律
(平成30年法律第72号)が成立し、同年7月13日に公布されました。
改正の概要は、
- 配偶者の居住権を保護するための方策
- 遺産分割に関する見直し
- 遺言制度に関する見直し
- 遺留分制度に関する見直し
- 相続の効力等に関する見直し
- 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
です。
そのうちの「3.遺言制度に関する見直し」では、自筆証書遺言の方式緩和が
あります。
遺言書を書くことを決めた相談者の話を伺っていると、以下のような点で自筆
証書遺言を選択する傾向を、私はこれまでの経験から感じています。
(1)自筆証書遺言を書くのに費用がかからない
- ボールペンや万年筆といった文房具、レポート用紙、封筒があればよい
- 公証役場への交通費(または公証人の出張費)、公証人の報酬、証人2名の報酬は不要
(2)自筆証書遺言を書くのに時間がかからない
- 思い立ったときに、すぐ書くことが可能
- 財産を分けたい受遺者を知っている
- 不動産や預貯金の情報(地番や口座番号)の情報が手元にあり、調べる手間がかからない
(3)自筆証書遺言は、自宅で一人で書くことができる
- 思い立ったときに、すぐに書くことが可能
- 家族に相談する必要がない
(4)自筆証書遺言は、書き直しが簡単にできる
- 思い立ったときに、すぐ書き直しができる
- 書き直しを、相談する必要がない
(5)自筆証書遺言を秘密にすることができる
- 遺言書の内容を秘密にすることができる
- 遺言書を書いたことを公言する必要がない
- 遺言書の保管を秘密にすることができる
(6)公証役場と関わる必要がない
- 公証役場まで行く必要を感じていない
- 自筆証書遺言は自宅で書くことができる
(7)全文を自筆で書くことになるが、書くという強い意志
- 全文(受遺者を特定する氏名・誕生日、財産内容含む)、遺言者の氏名、日付、押印の必要性は説明済み
自筆証書遺言は、
- 全文を自筆することが要求されている
- 自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の中で、自筆証書遺言は気軽に書くことができる
- 自筆証書遺言に添付する「財産目録」も自筆なので、財産を多くお持ちの方であっても、自筆証書遺言では「財産目録」は自筆
というのが施行前の現状となっています。
「自筆証書遺言の方式緩和」については、2019年1月13日が施行期日となっています。
今回の「自筆証書遺言の方式緩和」では、「財産目録」以外の部分で自筆を要求となります。
つまり、2019年1月13日の施行期日から自筆証書遺言に添付する「財産目録」は自筆する必要がなくなったということです。
自筆証書遺言に添付する「財産目録」は、2019年1月13日の施行期日から
- 誰かに作ってもらうことができる
- パソコンで作ることができる
- 不動産であれば登記簿謄本を添付して、「財産目録」とすることが可能
- 預貯金通帳の写しを添付して、「財産目録」とすることが可能
- ただ、「財産目録」の全ページに遺言者の署名と押印が必要
とすることができます。
「自筆証書遺言の方式緩和」の施行があったとしても、遺言書に記載する内容としては、
誰に(人物を特定できるように記載)
何を(どの財産なのか具体的に明示する必要があります)
どれくらい相続させる(もしくは、遺贈する)
を記載することに変わりはありません。
そこで、2019年1月6日時点での自筆証書遺言の事例を挙げて、改正ポイントを明示します。※施行前の自筆証書遺言の書式を例にして説明します。
※上記の遺言例をクリックするとPDFファイルが表示されます。
「自筆証書遺言の方式緩和」の施行により、今まで以上に利用促進されることを
期待しています。