高齢化社会を迎えている日本では、還暦を過ぎて仲がよいご夫婦がいれば、お独
りの方がいらっしゃいます。
お独りの方が、これからの人生をずっと独りで過ごすのか、新たなパートナーを
見つけて二人で過ごすのか考えることがあるかと思います。
最近では、「熟年結婚」、「熟年 お見合い」、「中高年 婚活」といったキー
ワードで検索できるWebサイトが多くあります。

今回は、奥さまと死別された男性が再婚する場合を考えてみます。

妻Bが亡くなったときには、子Cは結婚して孫Dがいました。
妻Bの遺産相続も無事に終わり、10年後にある女性と出会い再婚します。

この時点で相続人が誰になるのかを考えます。
夫Aの相続人は、配偶者である妻Eと子Cで、法定相続分は2分の1ずつです。
妻Eの相続人は、配偶者である夫Bと妻Eの兄弟姉妹となり、法定相続分は夫A
が4分の3で妻Eの兄弟姉妹が4分の1です。
熟年再婚する場合には、お互いに形成した財産の行方が気になるところです。
後妻となる妻Eと子Cとの間に微妙な緊張感が出ることもあるでしょう。

夫Aが亡くなると、配偶者である妻Eと夫Aの実子Cで法定相続分は2分の1ずつ
となります。

その数年後に妻Eが亡くなる場合には、相続人は妻Eの兄弟姉妹になります。
妻Eが相続した夫A(子Cからみると実父)の財産は、受け継ぐことが無くなり
ます。
妻Eが相続した夫Aの財産が自宅の土地建物であるなら、子Cからすれば自分が
生まれ育った家が他人に渡ることになってしまいます。

そうならないため、事前の対策としてどのような方法があるのかというと、
(1)夫Aが遺言書を書く
(2)後妻の妻Eが遺言書を書く
(3)子Cが妻Eとの養子縁組をする
という方法があります。

(1)夫Aが遺言書を書く
 妻Bと共に形成した財産については子Cに相続させ、妻Bが亡くなった後に
形成した財産を後妻の妻Eに相続させる遺言を書きます。
これであれば、自宅や一定の預貯金は子Cが相続でき、妻Eは老後の生活費の
を補える分の財産が相続できると考えます。
ただし、遺留分について考慮する必要があります。

(2)後妻の妻Eが遺言書を書く
 夫Aから相続した財産が残っているならば、子Cに遺贈させて残りを兄弟姉妹に
相続させる遺言を書きます。
兄弟姉妹に相続させず、子Cに全財産を遺贈させる遺言を書くことも可能です。
遺留分は兄弟姉妹にありません。

(3)子Cが妻Eとの養子縁組をする
 夫Aと妻Eの時に、子Cが妻Eの養子になるという方法もあります。
子Cには配偶者がいますので、配偶者の同意が必要です。(民法 第796条)

子Cが女子で夫の姓を名乗っている場合でも、そのままの姓となります。
(民法 第810条但し書き)

熟年再婚は、おめでたいことです。
しかし、夫婦となった者同士が形成してきた財産の相続といったデリケートな
問題がありますので、相続対策を考える必要があります。